ライフデザインの意味を考える
最近、ライフデザインの必要性が多く語られてきています。
なぜ、この時代にライフデザインの必要性が高まり、そしてそれをすることが有意義なのかを考えていきます。
社会は大きく変わり、人の価値観や行動も大きく変化しています。進学や就職、結婚、出産といった人生の節目となるイベント、いわゆるライフイベントのあり方や考え方も大きく変わり、それまでの一様なカタチから多様なカタチへと広がりをみせています。
「働く」を一つ例にとってみても、多様な仕事観の中で、色々な働き方も広がっています。
年功序列や終身雇用といった旧来のシステムは転換し、転職、起業、リモートワーク、副業など個人が適したカタチを模索しながら、進展しています。
結婚、出産など人生の大きな分岐点となるイベントも同様で、さらには、消費などあらゆる選択の機会において、多様な価値観が認められ、逆に言えば、多くの選択肢が広がり、自分で選択していかなければいけない時代と言えます。
このように、「多くの選択肢が広がった時代」は、個人にどんな影響をもたらすのでしょうか。
選択の基準を明確化する
最も重要なことの一つは、「自分で選択する意味が強まる」ということです。
選択肢が無ければ、そこを進むしかありませんが、選択肢があれば選択する必要がでてきます。さらに、その選択肢が広がれば、自分にとって何が重要かを自覚しておかないと選択しきれません。
言い換えれば、自覚的に「選択基準を明確化」しておくことが有意義になってくるということです。さらに、選択肢の範囲が大きく広がったため、いわゆる一般的な「正解」が当てはまらず、「人と比べてどうか」といった相対的な価値基準ではなく、「自分自身にとってどうか」といった絶対的な価値基準の中で、「正しい答え」よりも「納得する答え」が大切になってくると感じます。
しかし、日常的にこの「選択基準」を考え、自覚しておく機会はそれほど多くありません。
何となく過ごし、気づいたら選択しないといけないタイミングが来てしまい、何となく選択してしまう。そうすると、自分自身の中で納得した選択にならない可能性も出てきます。
だからこそ、その選択のタイミングが来る前に、ある程度自分の中で想像し、描いておくことが有効になります。
特に、人生の岐路となるライフイベントについて、情報を得たうえで、それぞれどんな姿になりたいのかを描くこと。
そしてそれを短期的ではなく、長期的な視点で考えてみること。
さらには、「いつ」「どこで」「何を」「どのように」について、ありありと描き、可視化しておくことが有意義です。
このように自覚的かつ具体的に人生を描き、気軽に楽しく未来を想像してみることが、今の時代においてより重要性を増していると感じています。
これまで、私自身も延べ約1万人以上の学生を中心にライフデザインの機会として、「ライフデザイン講座」を実施してきました。その参加者の多くがライフデザインを具体的に描いたことがありませんでした。また、考えたとしても一つ先のライフイベント、つまり学生なら「働く」までというのが現状です。
そこで、実際にデザインをして頂くと、「働く」と「結婚」が切り離して描けないことや、「働く」と「子ども」も切り離して描けないことなどが実感できます。
例えば、会社を選ぶときに、将来、家族をもつのか、その時にどのような家族構成を想定するのかによっても会社や仕事内容を選ぶ基準が変わってきます。
つまり、ライフデザインを考える場合、単一的にライフイベントを考えるよりも、複合的に連動させながら考えることがポイントで、それが個々の「人生の彩り」を決めるために不可欠になってくると思います。
もう一つ重要なこととして、早い段階からライフデザインを描いたとしても、それは固定化する必要はなく、柔軟に変えてもいいということです。
環境や意識が変われば、志向性や価値観も変わります。その時々で柔軟に変更していくことも大切です。ただ、変わる前提で良いので、若年層のうちから長期的な視点で自分の未来を描き、そこにたどり着くための道筋を考える。
そして、自分の未来ですので、ワクワクしながら重くなりすぎないで描く。
人生100年時代と言われている中、不確実で、先が見えない現実もあるからこそ、自分の人生を少し長い時間軸で想像し、逆算しながら、様々なライフイベントを描いてみる。それが納得できる人生を送るためのヒントになるのかもしれません。